システム障害対応やプロジェクト管理を長年経験してきたITエンジニアとして、「失敗」は日常的に向き合う課題です。ファミレス店長時代から数々の失敗を重ね、44歳になった今でも失敗から学び続けています。
そんな失敗と向き合い続けた経験を持つ私が、マシュー・サイド著「失敗の科学」を読んでみたところ、これまでの失敗体験が科学的に裏付けられた感覚を得ました。特にITプロジェクトでの失敗経験や、組織マネジメントでの課題が、この本の事例と重なる部分が多く、非常に興味深い内容でした。
🔸 失敗から学ぶ組織と隠蔽する組織の決定的な差
航空業界vs医療業界の事例で、失敗に対する姿勢が組織の成長を大きく左右することを証明
🔸 ITエンジニア・プロジェクト管理者必読の内容
システム障害対応、バグ修正プロセス、チーム改善に直結する実践的な知見が満載
🔸 認知的不協和という心理メカニズムの解明
失敗を認められない理由を心理学的に説明し、個人・組織レベルでの改善策を提示
🔸 22カ国で刊行された世界的ベストセラー
豊富な事例と科学的根拠で構成された343ページの読み応えある内容
🔸 小さな失敗の蓄積が大きな成功を生む法則
「百発逆転」の考え方で、失敗を恐れずチャレンジできるマインドセットを構築
🔸 日本の失敗を隠す文化への警鐘
特に日本社会の問題点を指摘し、イノベーション阻害要因としての失敗忌避文化を分析
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📚 書籍名
失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織
👨💼 著者
マシュー・サイド(1970年生まれ)
📖 出版社
ディスカヴァー・トゥエンティワン
📏 ページ数
343ページ(四六判)
💰 価格
定価2,530円(税込)/ Kindle版2,090円(税込)
📅 発売日
2016年12月23日
著者マシュー・サイドの経歴
著者のマシュー・サイドは、オックスフォード大学哲学政治経済学部(PPE)を首席で卒業した異才のジャーナリストです。卓球選手として10年近くイングランド1位の座を守った後、英『タイムズ』紙の第一級コラムニストやBBC『ニュースナイト』のコメンテーターとして活躍しています。
スポーツ選手としての失敗体験と、ジャーナリストとしての客観的な分析力を併せ持つ独特な経歴が、本書の説得力を高めています。
本書で紹介される失敗事例は、IT業界で働く私にとって他人事ではありませんでした。特に印象的だったのは以下の事例です。
航空業界vs医療業界の失敗対応
✈️ 航空業界の成功例
「ミスの報告を処罰しない」システムにより、多くの事故を未然に防いでいる。パイロットの燃料切れ警告無視事例から、システム全体の改善に繋げた。
🏥 医療業界の問題例
「10人に1人が医療ミス」の実態が改善されない背景には、失敗を個人の責任として処罰する文化がある。
これは完全にシステム運用の現場と同じ構造です。障害報告を処罰の対象にすると、隠蔽が起こり、根本的な改善に繋がりません。私自身、ファミレス店長時代にスタッフのミスを責めすぎて報告が上がらなくなった経験があり、まさに本書で指摘される「学習できない組織」そのものでした。
認知的不協和というメンタルトラップ
本書で最も衝撃的だったのは「認知的不協和」という心理メカニズムの説明です。自分の信念と現実が矛盾した時、人は現実を歪めて解釈し、失敗を認めないようになるという現象です。
ITプロジェクトでスケジュール遅延が発生した際、「要件定義が曖昧だった」「お客様の対応が遅かった」と外部要因に責任転嫁していた自分を思い出しました。この心理的メカニズムを理解することで、客観的な振り返りができるようになります。

システム障害対応への応用
🛡️ 障害発生時の対応変化
本書を読んだ後、障害発生時に「犯人探し」ではなく「システムの改善点探し」にフォーカスするようになりました。
📊 ポストモーテム(事後検証)の改善
航空業界の事例を参考に、非難を恐れず率直に問題点を共有できる環境作りを心がけています。
⚡ 小さな失敗の早期発見
「百発逆転」の考え方を取り入れ、小さなテストを繰り返してリスクを分散する開発手法を採用しました。
チームマネジメントでの革命的活用法
プロジェクトマネジメントにおいて、本書の考え方は私の手法を根本的に変えました。特に衝撃的だったのは「事前検死(プレモーテム)」という手法です。
🔍 事前検死(プレモーテム)の実践例
新システム開発プロジェクトの開始前に、チーム全員で「1年後、このプロジェクトが大失敗したと仮定して、その原因を洗い出す」ミーティングを実施。結果、要件定義の曖昧さ、コミュニケーション不足、技術選定ミスなど、従来では見落としがちな15項目のリスクを事前に特定できました。
📊 心理的安全性の劇的向上
ファミレス店長時代、ミスを報告したスタッフを叱責していた結果、重要な問題が隠蔽される悪循環に陥っていました。本書の航空業界事例を参考に「報告したら感謝する」文化に変えたところ、チームの問題発見力が3倍に向上。小さなバグや懸念点の早期発見により、大きな障害を未然に防げるようになりました。
⚡ 「犯人探し」から「原因探し」へのシフト
システム障害発生時の対応を根本的に変更。従来の「誰がミスをしたか」から「なぜシステムがミスを防げなかったか」に視点を変えることで、同じ問題の再発率が80%削減されました。チームメンバーも失敗を恐れず、積極的に新しい技術にチャレンジするようになっています。
🎯 小さな実験の習慣化
「百発逆転」の考え方を導入し、大きな機能開発前に必ず小さなプロトタイプを作成。2週間で検証→改善を繰り返すことで、最終的に当初想定の120%の品質向上を実現しました。
44歳になって気づいたのは、失敗を恐れて保守的になることよりも、小さな失敗を積み重ねて学習していく方が、長期的に大きな成果を生むということです。本書は、マネージャーとしての私のスタイルを完全に変えてくれた人生の一冊と言えます。
特におすすめできる人
✅ ITエンジニア・システム運用担当者
障害対応やシステム改善に直結する内容で、現場での実践価値が非常に高い
✅ プロジェクトマネージャー・チームリーダー
失敗を学習機会に変える組織作りのヒントが豊富に得られる
✅ 起業家・経営者
イノベーションを阻害する組織文化の改善策が学べる
✅ 失敗を恐れがちな完璧主義者
失敗に対する考え方を根本的に変えるきっかけになる
読み方と活用のコツ
📖 読書時間
343ページの濃い内容で、じっくり読むと約8〜10時間程度。章ごとに区切って読み進めることをおすすめします。
📝 実践のポイント
読了後すぐに自分の職場や過去の失敗体験と照らし合わせて、具体的な改善策を考えることが重要です。
総合評価:⭐⭐⭐⭐⭐(4.6/5)
実用性: ⭐⭐⭐⭐⭐ – システム障害対応、プロジェクト管理に直接活用可能
読みやすさ: ⭐⭐⭐⭐ – 具体的な事例が豊富で、理論だけでなく物語として楽しめる
IT業界適用性: ⭐⭐⭐⭐⭐ – エンジニアの日常業務に直結する内容で実践価値が極めて高い
長期価値: ⭐⭐⭐⭐⭐ – 技術トレンドに左右されない普遍的な内容で、キャリア全体で活用可能
コストパフォーマンス: ⭐⭐⭐⭐ – 2,530円で得られる知識の価値は十分高い
🔧 実務に直結する具体的事例
航空業界、医療業界、IT企業の失敗事例が豊富で、自分の業務に置き換えて考えやすい構成になっています。
📊 科学的根拠に基づく分析
心理学、経済学の理論を用いた客観的な分析で、感情論ではない実践的な改善策が提示されています。
🌏 世界的ベストセラーの信頼性
22カ国で刊行され、5万部を突破した実績は、内容の普遍性と価値を証明しています。
💡 マインドセット変革の効果
失敗に対する考え方が根本的に変わり、チャレンジ精神と学習意欲が向上します。
📚 読み物としての面白さ
ドラマチックな事例が多く、ビジネス書でありながらノンフィクション小説のような読み応えがあります。
📖 ボリュームの多さ
343ページの大作で、読破には相応の時間とエネルギーが必要です。忙しい方は章ごとに区切って読むことをおすすめします。
🎯 組織論としての物足りなさ
一部のレビューでは「ビジネス書としては具体的な組織改革手法が不足」という指摘もあります。
🧠 心理的負担の可能性
自分の失敗体験と重なる部分で、精神的にしんどく感じる方もいるかもしれません。
💰 価格の高さ
定価2,530円は一般的なビジネス書よりも高めの設定です。ただし内容の質を考えると妥当な価格と言えます。
📚 新品価格
定価:2,530円(税込)
💻 Kindle版
2,090円(税込)、Kindle Unlimitedでも読み放題対象
🔄 中古価格
ブックオフ:2,090円(定価の17%OFF)
📖 図書館
読書メーターでの登録数4,753件から見ても、多くの図書館で所蔵されている可能性が高いです
個人的には、Kindle版での購入をおすすめします。検索機能やハイライト機能を使って、後から重要な部分を見返しやすくなるためです。
としゆき