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今更聞けない「人工知能の現実と可能性」

ここ数年で人工知能やAIという言葉を頻繁に見聞きするようになったと思いませんか? AIの勉強を初めて約3ヶ月が経過しました。AIの勉強をする中で、コンピュータの発明以降、”人工知能が実現するかもしれない”と何度かAIブームが発生していることを知りました。今のAIブームは第三次AIブームというカテゴリに分類されるようです。今回は近い未来にターミネーターのようなロボットが現れるかもしれないと思っている人向けにAIの歴史と現実についてシェアします。今回は”これからAIを勉強する方向け”というレベルです。AIバリバリの方には今更なレベルですのでご容赦ください。

人工知能はまだこの世に存在していない

毎日の様に人工知能(AI)を搭載した製品やソリューションが発表されています。しかし、本当の意味での人工知能(人間のように考えるコンピュータ = 強いAI)はまだこの世に存在していません。

強いAIと弱いAI(Strong AI and Weak AI)は、人工知能(AI)の定義としてジョン・サールが作った有名な用語です。簡単に説明すると、強いAIは映画ターミネーターに登場するロボットのように人間と同じく認識、判断、行動することができる知能を指し、弱いAIとは現代で実用化されているAIのように特定の条件の下で認識、判断、行動ができるAIを指します。

現時点において、世の中で人工知能と呼ばれているものは、人工知能を生み出そうとした過程で生まれた副産物に過ぎません。音声認識、文字認識、自然言語処理などが人工知能の研究から生まれた代表的な副産物といえるでしょう。

人工知能の今を正しく理解しておくことで、人工知能に関する情報をより冷静に判断することができるようになります。そのためにはまず歴史とこれまでの流れを大まかに掴んでおくことが大切です。まずは人工知能の歴史を簡単に振り返ってみましょう。

第一次AIブーム 1956年~1960年代

推論・探索の時代と呼ばれることが多いです。迷路やパズル、チェスなど正解までの道程を見つけるために探索を繰り返して処理する手法です。例えば迷路のような道がある場合に、ゴールまでの道程を解く人工知能などが有名です。人工知能をビジネスチャンスと捉えて、多くの資金が投入されましたが、この手法では現実の課題解決には活かせず、パズルやチェスなどのトイプログラムしか解けないという結論に至り、第一次AIブームは終わりを迎えました。

第二次AIブーム 1980年代

この時代は、知識表現の時代と呼ばれています。第二次AIブームの火付け役は「エキスパートシステム」と呼ばれる存在です。エキスパートシステムとは、専門家(エキスパート)の知識をコンピュータに移植することにより現実の複雑な問題を人工知能に解かせようとする手法です。

例えば、私たちが体調を崩して病院に行った場合、医師(専門家)は私たちに対して問診を行ないます。それにより、患者の症状から病名を特定(推測)することができます。この問診による判断をデータとして蓄積します。そのデータを利用してコンピュータは「頭が痛いですか?」、「倦怠感はありますか?」などといった問診を私たちにすることで、「頭が痛ければA~Eの病気の可能性がある」、「倦怠感がないのであればB、Dの二つの病気の可能性が高いだろう」といった判断をします。

この手法は人工知能の応用範囲を現実的な医療診断、会話アプリケーションなどに活かせる可能性があるとされ、多額の資金が投入されました。これにより人工知能ブームが再燃し第二次AIブームが始まりました。しかし、あくまでもパターンによる切り分けの結果を返すだけしかできず、応答の精度を高めるには無数にわたる症例パターンをプログラムとして組み込まねばならず、実用化は難しいと判断され収束していきました。

人工知能の現状

前途の通り、現代は第三次AIブームに分類されています。過去のAIブームは、いずれも本来の人工知能の実力が理解されないまま理想の人工知能論だけが一人歩きし、限界が見えた段階で盛り上がりの熱が冷めて終息しました。第三次AIブームも火付け役となったディープラーニング(深層学習)の限界が見えたタイミングで終息してしまう可能性はありますが、第一次AIブームで実現した応用範囲を”1″とした場合、第二次AIブームでは”3″、第三次AIブームでは”10″という具合に、人工知能技術を用いて実現できる範囲が爆発的に大きくなったことは間違いありません。

様々なニュースに取り上げられた情報を見ると、近い未来に人工知能が人間を超えてしまうような取り上げ方をされていることがあります。でも、実際には実現できそうな事と乗り越えなければならない問題の差がかなり大きいことを知っておかなければいけません。今起こっていることは、いわゆる人工知能ブームに近いだけかもしれないという点も含めて。

ディープラーニング(深層学習)

第三次AIブームの火付け役は間違いなくディープラーニング(深層学習)です。この手法はこれまでの人工知能の常識を打ち破る手法で、新たな可能性への期待が高まっています。ディープラーニングはどのような手法なのかは知らないけれど、名前だけは聞いたことあるという方も多いでしょう。

ディープラーニングを簡単に説明すると、特徴表現そのものを機械がコンピュータ自身に学習させる手法です。特徴表現はあるものを特定する為の特徴を示します。特徴量と表現されることもあります。

例えば、私の目の前にはiPhoneがあります。人間は瞬時にiPhoneだと判断できますが、人工知能(コンピュータ)に判断させるのは簡単ではありません。iPhoneとは長方形をしている、液晶画面を備えて、ホームボタンを備えている等の特徴から判断することになります。長方形とは何か、液晶画面とは何か、ホームボタンとは何か…と前提となる情報も必要です。これらの特定する為の情報(特徴)を特徴量と呼びます。

従来の方法だと、これらの特徴量を予め人間が作り出す必要がありましたが、ディープラーニングは認識(判断)するための情報を人工知能自らが作り出すことができます。この「データをもとにコンピュータが自ら特徴量を作り出す」という手法は今までの人工知能とは大きく異なるアプローチです。

ディープラーニングのイメージ

iPhoneの画像から、それがiPhoneであると判断するためのイメージを図で表現してみました。画像を見たときにその特徴を判断するための材料が形・大きさ・色など何層にも分かれています。この層を増やすことで方法・手段が増え、より精度の高い判断が可能になります。次に、処理精度を高める為、出力層と呼ばれる部分でわざと間違いのデータを突き合せるて認識のズレや矛盾を無くします。最後に、学習内容を1つのデータとして自動的に蓄積していき、次回の判断基準の1つとして再利用します。

ディープラーニングを詳しく学ぼうとするとかなり難しいですが、ディープラーニングは従来の人工知能が抱えていた壁をぶち壊す可能性を秘めていると思って間違いないです。

人口知能はターミネーターではない

強いAIの例としてターミネーターを挙げましたが、厳密にはターミネーターは人工知能ではありません。人工知能は人間でいう「脳」を指す言葉であって、ロボットとして稼動する筐体を含めたものを表現する言葉ではないからです。工場などで稼働しているロボットには単純にプログラムされた内容で動作するもの、センサー等で読み取った情報と予め設定された情報の差異を検知してエラー商品を選別するものがあるでしょう。その中には弱いAIに分類される判断力を有したロボットも存在していると言えるでしょう。現実の世界では現れていませんが、ターミネーターやドラえもんは自ら判断する能力を有していることから強いAIを備えたAIロボットという事が出来ます。あくまでも人工知能は「頭脳」の部分に対する研究であって、ロボット工学とは近いけれども異なる存在です。

自ら考える力を持つ人工的な「脳みそ」を作る研究が人工知能の研究です。逆に言えば、脳みそが完成しない限り人工知能が勝手に一人で判断することもありません。この研究については「人工知能は人間を超えるか – ディープラーニングの先にあるもの」という書籍の中でかなり細かく紹介されています。私がAIを学ぶにあたり、最初に手に取った書籍であり、とても分かりやすく面白く読めます。AIを事業に活かす能力を認定する「JDLA Deep Learning for GENERAL」の参考書籍です。電子書籍版が安く販売されているので、通勤時などに時間があれば、ぜひ読んで頂きたい書籍です。

人工知能のレベル分け

「人工知能は人間を超えるか – ディープラーニングの先にあるもの」の中で、著書の松尾教授は人工知能のレベルを4つに分類されています。この分類はとても分かり易いです。

レベル1 – 制御

人間が情報を入力してあげてその通りに動くだけ。制御システムでAという信号を送るとAという動き、Bという信号を送るとBという動きをするという単純な仕組みで動きます。人工知能というよりはプログラムによる制御に近く、荷物をA地点からB地点に運搬する場合、その荷物の縦、横、高さを測り大きさによってどこに持って行くかを選択するルールを人間がプログラムし、レベル1の脳を搭載したロボットはルールに従って単純に動くだけです。

レベル2 – 知識、推論、探索

基本的にはレベル1と同じ制御ですが、振る舞いのパターンとルールがレベル1に比べて大規模になったものがレベル2です。このレベルに分類されるものとしてメジャーなものは、将棋プログラムやルンバ等のお掃除ロボット、質問に自動的に答えてくれるプログラムです。人間の持つ知識をできる限り詰め込み、その中から最適解を選択するして動作します。

レベル2になると、レベル1では単純に荷物をA地点からB地点運搬するだけでしたが、「ワレモノ注意」のタグがあればゆっくりと丁寧に作業する等の追加機能を有します。第2次AIブームで実現できたものは、このレベル2まででです。「知識」を入れれば入れるほど機械は賢くはなります。しかし、知識を入れるという作業はとても大変で、実用可能な知識と例外にも対応可能なものを作ろうとするほど入れ込む「知識」の数があまりにも膨大になってしまう。結果として数の勝負になり、結果そのすべてをプログラムとして書ききれない、しかも応用ができないという問題が発生しました。

レベル3 – 機械学習

レベル1や2は人間の手で全てをプログラミングして制御する必要がありましたが、レベル3では、ある程度のサンプル数から自動的にそのパターンとルールを学ぶことができるようになります。荷物運搬であれば、いくつかのサンプルと荷物のどの部分に注意するかという情報(特徴)を人が入れてあげればあとは勝手に機械が試行錯誤を繰り返してルールを作り上げていく。ただし、人が教えていない突発的な荷物が来たら「人がその荷物の何に注意するか」を随時教えて更新していく必要があります。

現在の人工知能はこの段階です。レベル2まではいかに「知識」の量を増やしていくかが重要でしたが、レベル3ではある一定量のサンプルを元に自動的にルールを作り、最も答えに近いものを当てはめていきます。人工知能は答えを全て知っている状態ではなく、答えとなり得るものを選択する方法を学習させていきます。

レベル4 – 特徴表現学習

人間がレベル3までに行なっていた「人がその荷物の何に注意するか」というパターンとルールさえも人工知能が自ら学んで知識データとして積み重ねていける仕組みです。いくつかサンプルを与えれば、あとは勝手に機械がパターンとルールを学んで最も効率的な運び方と扱い方を自ら最適化していきます。この荷物は小さいけど細長いので斜めに持って、中身は繊細で割れやすい材質なので注意しながら最短距離で運ぶ、といった具合に。一旦、サンプルが出来ればそれ以降はまたその経験を元に行動し最も正しい運び方を自ら勝手に学んでいくことができます。

この段階までくると本当の意味での「全自動化」が見えたような気になります。しかし、これら4つのレベルはまだ人工知能には人の手でパターンやルール、サンプルなどの情報を与えなければ動かない段階なので、人間のように人工知能が0ベースからすべてを1人で学び勝手に行動するのは不可能であり、その地点に到達するにはまだまだ時間がかかるのです。

今見えている人工知能の限界と壁

インプットさせる情報が多すぎて時間がかかる

脳は電気回路とほぼ同じ性質を持ち、人間の知能は原理的にはすべてのコンピュータで実現可能だと考えられています。脳の性質としては、人間とコンピュータは同じですが、人間の思考をコンピュータで実現するには「インプットさせる情報の多さ」という壁があります。

人間の思考をコンピュータで再現するためには、き途方もない情報量を入力、蓄積する必要があります。人間の思考は複雑でパターン化したとしても、何千何万通りにもなり、人や場面、状況によって判断結果は都度変ります。この全ての情報一つ一つを入れ込むことなんて不可能に近いというのが現在の壁の1つです。

どの特徴に注目して情報を取り出すべきか、その概念を理解するのに人の手が必要

ディープラーニングのイメージでも触れた内容ですが、目の前にある黒い長方形の物体がiPhoneであることを私は瞬時に判断できます。でも、人工知能にこれを認識させようとした場合はとても難しいです。まずは、iPhoneの特徴を覚えさせる必要があり、次にどの部分がiPhoneと判断できる特徴なのかという特徴量を人が人工知能に教え込む必要があります。そしてその特徴を元に認識した物体が「iPhone」であるという概念を覚えさせる必要があります。これがとても難しいのです。

人には視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚があり、判断するための方法や手段は沢山あります。そして世間一般的な常識として、この長方形の物体が、かまぼこ板でも、モバイルバッテリーでも、こんにゃくでもなくスマートフォンだという概念自体も当然理解しています。このような人間が何の苦労も無く判断していることでさえ、人工知能に判断させるためには下記のような情報を与える必要があります。

  • 判断するための方法・手段を持つこと
  • 得た情報をうまく処理してスマートフォンだと判断すること
  • そもそもスマートフォンというものが何なのかその概念を知っていること
  • 概念を形づくるための世間一般の常識や背景を知っておくこと

これだけの事を覚えさせて、仮にスマートフォンだと判断できたとしてそのスマートフォンがアンドロイドではなく、iPhoneかどうかを判断するにはまた別の特徴量が必要になってきます。現時点では「人工知能がこの特徴量と概念を一人で勝手に学習できないこと」が最大の壁になっています。人間が情報を与えない限り、人工知能は0ベースから学習することができなのです。

これらの壁を打ち崩す可能性を秘めた手法こそが第三次AIブームの火付け役となったディープラーニング(深層学習)です。

人工知能を作ることは人を知ること

「人工知能は人間を超えるか – ディープラーニングの先にあるもの」でも触れられていますが、私たちは何も考えなくても、場の空気を読んだり、相手とコミュニケーションをしたり、精神的な苦しさや嬉しさを感じたり、環境によって対応を変えることができます。それば同じ日本人でも生まれ育った環境で異なるし、世界規模でみれば国によっても大きく文化が異なります。

この国独自の文化や風習、常識は人工知能にとってかなり厄介なものです。同じ事柄に対して文化や風習によって判断が異なる。その要素を確実に一つ一つ理解するには、人の脳の全てを完全に解明する必要があるでしょう。つまり、人工知能を知ることは「人間そのものを理解する」ことに繋がっているのです。

多くの可能性に満ちた人工知能ですが、目先の情報だけに惑わされずその背景をきちんと知ることが大事です。うまく活用すれば、これまで不可能だと思われていたことを可能にすることができます。繰り返しになりますが、AI学習の一歩として、「人工知能は人間を超えるか – ディープラーニングの先にあるもの」は読みやすく勉強になります。AI白書2017は前者に比べて堅い表現が使われていますが、得られる知識はより深いものです。両書とも今回紹介した以上の内容が詰まっているので、ぜひ実際に書籍を手にしてAIの世界を感じてみてはいかがでしょうか。


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