TEDって言っても、テディベアがブラックコメディを炸裂させる映画「Ted」じゃなくて、毎年カナダのバンクーバーで世界的講演会として開催されているTEDの方。正式に講演会自体は「TED Conference」(テド・カンファレンス)で、主催している団体がTED(テド、英: Technology Entertainment Design)です。
TEDのアーカイブをチェックしていたら、Simon Sinekさんの「How great leaders inspire action(日本語訳:偉大なリーダーはどのように行動を促すか)」に共感するものがあったのでシェアします。
偉大なリーダーはどのように行動を促すか
偉大なリーダーはどのように行動を促すかという邦題でTEDに公開されているSimon Sinekさんの「How great leaders inspire action」の講演の内容です。この講演自体は2009年9月の「TEDxPuget Sound」というイベントで講演されたもののようですが、2019年の現在でも通じる内容だと思います。
この講演を聞くことで、自分がリーダーとして周囲を巻き込んで何かを達成する、物事を進めていく、壁を突破していくための行動、言動の基本原則を再確認することができます。どうすればチームのメンバーが行動してくれるのか、過去の歴史的な失敗例、成功例を元に自身の行動を見直すためのヒントを習得できます。リーダーシップを磨きたい人にお勧めの講演です。
講演をざっくりご紹介
忙しい人向けに講演内容をざっくりご紹介。面白い内容なので時間があるときにぜひ講演を聞いてください。
- なぜ、アップルには他と違う何かがあるように見えるのか
- なぜ、キング牧師が市民権運動を指導できたのか
- なぜ、ライト兄弟が有人動力飛行を実現できたのか
- 偉大で人を動かす指導者や組織は全て、考え、行動し、伝え方が同じである。
- この手法は多くの人々が実践する方法とは異なっていました
- 事業が失敗するのはいつの時代でも「資金不足・人材不足・市場環境の悪化」の3点。
- 20世紀初頭、サミュエルは、巨額の資金、最高の人材、市場の環境は絶好の中で飛行機を開発
- 同時期にライト兄弟は、資金がなく、大学を卒業したメンバーもない状況で飛行機を開発
サミュエルの名は知らないけれど、ライト兄弟の名前は聞いたことがある人も多いはず。結果的に、初飛行に成功したのはライト兄弟だったからです。なぜ、資金も人材もなかったライト兄弟が成功したのかを、動機という観点でSimonは分析しました。
動機の違いは、ライト兄弟が大義と理想と信念を持っていたこと。ライト兄弟は飛行機械を作り上げることができたら、それは世界を変えることになると信じていました。
富と名声を追い求めていたサミュエル・ラングレーのチームは給与のために働きました。一方でライト兄弟のチームは夢を信じて血と汗と涙を流して共に働きました。
- 人は「何を」ではなく「なぜ」に動かされる
- 自分が信じていることについて語れば、そのことを信じてくれる人たちを惹きつける
誰にせよ、その組織にせよ、自分たちが何をしているかはわかっている。他社との差別化された価値だとか、独自のセールスポイントと言われる部分を理解している。
しかしながら「なぜそれをやっているのか」という点を理解している人や組織は非常に少ない。利益を得るため?そうではない。利益は答えではなく結果。
みなさんが日々行っている仕事に対して、「なぜそれをやっているのか」という目的を説明できますか?とSimonは講演で問いかけます。
Simonは成功の分岐点をジェフリー・ムーアの「キャズムを超える(Cross
ing the chasm)」と「 イノベーションの普及の法則 」の考え方を使って説明しました。
アーリーマジョリティーが試そうという気になるのは、だれか他の人が先にトライした後。イノベーターとアーリーアダプタは、自分の直感に従って決める人達。
彼らは世界に対して信じることに基づいて、直感的に判断するのを好む人たち。入手が難しくとも問題にしません。いわゆるiPhoneや新作ゲームの発売日に行列に並んでも手に入れたい人たち。
マーケティング・コンサルタントのジェフリー・A・ムーア(Geoffrey A. Moore)の著書『Cross
ing the chasm』(1991年)に登場するキーワード。
ハイテク市場におけるマーケティング理論で、イノベーターとアーリーアダプターを合わせた層に普及した段階(普及率16%超)で、新技術や新流行は急激に拡がっていく。イノベーターとアーリーアダプターにアピールすることが新製品普及のポイントであるという考え。
人口の2.5%はイノベーター。13.5%はアーリーアダプタと呼ばれる人たち。34%はアーリーマジョリティー、レイトマジョリティーにラガードと続きます。
人はみんな、この軸上のいろいろな時点に位置づけられます。イノベーションの普及の法則が教えるところは、マスマーケットで成功したいなら、あるいはアイデアを幅広く受け入れて欲しいなら、そのためには臨界点である15から18パーセントの市場浸透率が必要ということです。
「イノベーションの普及の法則」の成功例
Simonは1963年の夏、25万人もの聴衆をワシントンに集めた、キング牧師の演説を例に成功例を紹介しました。招待状を送ったわけでもなく、告知するためのウェブサイトもない時代に、どうして25万人も集まったのか。
キング牧師はアメリカを変えるために何が必要かなどを説かず、彼は自分が信じることを語ったのです。そして、彼が信じることを信じた人々が、彼の動機を自らの動機とし、他の人にも伝えたのです。さらに多くの人々に伝えるため組織を作った人もいました。結果、25万人がワシントンに集まりました。
この25万人の中に、キング師のために集まった人は何人いたでしょうか。答えはゼロです。みんな自分自身のために集まったのです。彼ら自身がアメリカに対して信じることのために、何時間もバスに揺られてやってきて、炎天下の8月にワシントンへ集まったのです。
キング牧師は、この世界には2種類の法があると信じていました。神によって作られた法と、人によって作られた法です。そして、人が作った法がすべて神の法と整合するまでは世が公正になることはないと信じていました。
市民権運動はたまたま、彼の人生の目的を果たす上で完璧な追い風でした。(ビジネスでいうところの 市場の環境は絶好の状況)
人々がついて行ったのは彼のためではなく自分自身のためでした。その中で「私には夢がある(I have a dream)」という演説をしたのです。「私にはプランがある」という演説ではありませんでした。
個人であれ組織であれ、我々が導く人に従うのは、そうしなければならないからではなく、そうしたいから。
導く人に従うのは、彼らのためでなく自分自身のためです。そして、「なぜ」から始める人が周りの人を動かし、さらに周りを動かす人を見出せる力を持つのです。